トリオンフィとタロッキの用語
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trionfi と tarocchi という言葉は、タロットがイタリアのカードゲームの語彙からどのように発展したかを考える手がかりになります。本稿では、史料で確認できる用法と、後世の神秘主義的な解釈を分けて整理します。
概要
タロットカードをめぐる用語は、6世紀にわたって大きく変化してきました。現在「タロット」と呼ばれているものは、15世紀のイタリアでは当初トリオンフィ(凱旋)として知られ、その後イタリア語でタロッキ、フランス語と英語でタロット、ドイツ語でタロックとなりました。この言語的変遷を理解することは、カードそのものの歴史——宮廷のカードゲームから世界的な現象へ——を明らかにします。
元の名称:トリオンフィ(凱旋)
意味と用法
タロットカードの最も初期の名称は**「カルテ・ダ・トリオンフィ」(凱旋のカード)または単に「トリオンフィ」**(凱旋)でした。この名称は、4つの通常のスートのどのカードよりも強い22枚の切り札——すべての他のカードに「凱旋する」カード——を特に指していました。
"These new decks were originally called 'Carte da trionfi' or Triumph cards, and the additional cards known simply as Trionfi, which became 'trumps' in English."
— FoAM / The Libarynth, "Tarot and Ethnobotany Tutorial"
出典: https://libarynth.org/parn/tarot_tutorial
"Trionfi (Italian, 'triumphs') are 15th and 16th-century Italian playing card sets, all trumps rather than numbers, with allegorical content related to those used in tarocchi games."
— Wikipedia, "Trionfi (cards)"
出典: https://en.wikipedia.org/wiki/Trionfi_(cards)
最初の文献証拠
「カルテ・ダ・トリオンフィ」の最初の文献証拠は1442年のフェラーラの宮廷記録に現れますが、このゲームはそれより少し前から存在していた可能性があります。
"The first literary evidence of the existence of 'Carte da trionfi' is a written statement in the court records in Ferrara in 1442 but the oldest surviving tarot cards are 15 fragmented decks painted in the mid 15th century for the Visconti-Sforza family — the rulers of Milano."
— FoAM / The Libarynth, "Tarot and Ethnobotany Tutorial"
出典: https://libarynth.org/parn/tarot_tutorial
なぜ「凱旋」なのか?
切り札が「凱旋」と呼ばれた理由には、いくつかの仮説があります:
- ゲームの仕組み:切り札はプレイ中に他のすべてのカードに「凱旋」する
- カーニバルの行列:イメージはルネサンス期のトリオンフィ——寓意的な勝利を描いた豪華なパレードの山車(例えば、愛の凱旋、死の凱旋)——に触発された可能性がある
- ペトラルカの詩:イタリアの詩人ペトラルカはI Trionfi(凱旋)を著した。これは愛が貞節に、死が愛に、名声が死に、時が名声に、永遠が時に勝利する様を描いた一連の寓話詩であり、そのテーマはタロットの構成と共鳴している
"Actually there are various hypotheses on why the Major Arcana were previously called 'Triumphs' ('trionfi'); on one hypothesis they were called 'Triumphs' because they triumphed over all other cards in the game."
— Carlo Penco, "Dummett and the Game of Tarot"
出典: https://dialnet.unirioja.es/descarga/articulo/4247990.pdf
英語の「トランプ」という語
英語の**「トランプ」*という語(ブリッジやホイストの切り札としての)は、イタリア語のトリオンフィからフランス語のトリオンフ*を経て直接派生しました。この言語的なつながりは、カードゲームにおける「切り札スート」という概念がタロットに起源を持つことを裏付けています。
「タロッキ」への移行
名称が変わった時期と理由
15世紀後半から16世紀初頭のいつ頃か、名称はトリオンフィからタロッキ(単数形:タロッコ)へと移行しました。この移行の理由については議論があります:
- ゲームが「トリオンフィ」に特定の文化的意味合いを持っていた宮廷を超えて広まるにつれ、新たな名称が必要になった可能性がある
- 「トリオンフィ」という語が、切り札を用いるあらゆるカードゲームの総称となり、特定の78枚組デッキとの混同が生じた
- 地方の方言が移行に影響した可能性がある
"This is why the name 'trionfi' for trumps was let go of in Italy, and was applied as a general term for games involving trumping as well as trumps themselves."
— History Forum, "Tarot, the Game of Triumphs: European heritage in the form of leisure"
出典: https://historum.com/t/tarot-the-game-of-triumphs-european-heritage-in-the-form-of-leisure.95793
「タロッコ」という語
単数形のタロッコは、当初このゲームの1枚の切り札を指していました。やがて、複数形のタロッキがデッキ全体とゲームの名称となりました。
"Tarot (/ˈtæroʊ/, first known as trionfi) and later as tarocchi or tarocks is a set of playing cards used in Tarot card games and fortune-telling or divination."
— Wikipedia, "Tarot"
出典: https://en.wikipedia.org/wiki/Tarot
「タロット」/「タロッキ」の語源
未解決の謎
「タロット」という語(およびそのイタリア語源「タロッキ」)の語源は未解決のままです。単一の理論も学術的な合意に至っていません。
"Although there are several theories concerning the origin or the etymology of the word 'tarot' none of these proved to be completely satisfactory neither any of these we could call 'the right one' or the most probable."
— FoAM / The Libarynth, "Tarot and Ethnobotany Tutorial"
出典: https://libarynth.org/parn/tarot_tutorial
"The Shorter Oxford English Dictionary entry for Tarot reads: 'Also Taroc. 1598. [F., ad. It. tarocco (pl. tarocchi), of unkn. origin.]'"
— Edmund Leach, London Review of Books, "Tarot Triumph"
出典: https://www.lrb.co.uk/the-paper/v02/n17/edmund-leach/tarot-triumph
提示されている語源説
| 理論 | 提示された起源 | 論拠 |
|---|---|---|
| タロ川 | パルマ近郊のイタリアの川 | このゲームが人気だった地域との地理的なつながり |
| アラビア語「トゥルーク」 | アラビア語で「道」または「路径」 | ヨーロッパのカードゲームへのイスラムの影響の可能性 |
| アラビア語「タラカ」 | アラビア語で「去る、放棄する」 | プレイ中に残されたカードを指す |
| ハールートとマールート | 魔術と関連するクルアーンの天使たち | 音の類似;オカルト的な関連性と結びつく |
| イタリア語「タロッカーレ」 | 切り札を打つこと | イタリア内部での言語的発展 |
| ギリシャ語「タロス」 | 不確定 | 推測的なつながり |
"One theory relates the name 'Tarot' to the river Taro in the northern Italy near Parma which can be seen in relation with the geographical source of the tarocchi game. The other theories however often point out Arabic words 'Turuq' which means 'ways' or in other case to the word 'Taraka' meaning 'to leave, abandon, omit, leave behind.'"
— FoAM / The Libarynth, "Tarot and Ethnobotany Tutorial"
出典: https://libarynth.org/parn/tarot_tutorial
"Finally, there is also a proposal that word Tarot refers also to the term 'Harut and Marut' mostly regarding the phonetic resemblance with two angels mentioned in a short account in the Qu'ran."
— FoAM / The Libarynth, "Tarot and Ethnobotany Tutorial"
出典: https://libarynth.org/parn/tarot_tutorial
学術的な合意
多くの真剣な学者(タロット史の最も権威ある学術的専門家であるマイケル・ダメットを含む)は、語源は未解決であると考えています。この語は15世紀後半にイタリアの方言から生じた可能性が高いですが、その正確な起源は不明のままです。
名称の国際的な変種
タロットがヨーロッパ中に広まるにつれ、名称は各地の言語に適応しました:
| 言語 | 用語 | 備考 |
|---|---|---|
| イタリア語 | Tarocchi (複数), Tarocco (単数) | 原形 |
| フランス語 | Tarot | 英語への標準的な借用語となった |
| 英語 | Tarot, Tarock | "Tarot"が優勢; "Tarock"は古語 |
| ドイツ語 | Tarock | カードゲームの伝統で使用される |
| スペイン語 | Tarot | フランス語から借用 |
| ポルトガル語 | Tarô | フランス語から借用 |
| ポーランド語 | Tarok | ドイツ語から |
| ハンガリー語 | Tarokk | ドイツ語から |
"Tarot (/ˈtæroʊ/, first known as trionfi) and later as tarocchi or tarocks) is a set of playing cards used in Tarot card games and fortune-telling or divination."
— Wikipedia, "Tarot"
出典: https://en.wikipedia.org/wiki/Tarot
関連用語
アルカナ
「アルカナ(Arcana)」という用語(単数形: Arcanum)は、「閉じられた」や「秘密」を意味するラテン語に由来します。19世紀にエリファス・レヴィがタロットカードの2つのグループを区別するために広めました:
- 大アルカナ(Major Arcana)(Arcana Maggiore): 22枚の切り札
- 小アルカナ(Minor Arcana)(Arcana Minore): 56枚のスートカード
"Arcana — plural form of the Latin word 'Arcanum' meaning 'closed' or 'secret'."
— FoAM / The Libarynth, "Tarot and Ethnobotany Tutorial"
出典: https://libarynth.org/parn/tarot_tutorial
"Levi also introduced the terms 'Major' and 'Minor Arcana' to refer to the trump cards and the pip cards respectively."
— Victoria and Albert Museum, "A history of tarot cards"
出典: https://www.vam.ac.uk/articles/tarot-cards
ピップカード
小アルカナの数字札(エースから10)は、伝統的に**「ピップカード(pip cards)」**と呼ばれます。これは、スートと数字を示す小さな記号(ピップ)に由来します。
宮廷カード
各スートの4枚の絵札(ペイジ、ナイト、クイーン、キング)は、王室の宮廷の成員を描いているため**「宮廷カード(court cards)」**と呼ばれます。
トランプ / アトゥー
フランスのタロットでは、切り札は**「アトゥー(atouts)」と呼ばれます(文字通り「すべてに対して」の意で、他のすべてのスートに勝つため)。英語では、単に「トランプ(trumps)」*と呼ばれ、これは元のイタリア語のtrionfi*に由来します。
ミンチアーテ:関連するゲーム
**ミンチアーテ(Minchiate)**は、フィレンツェでプレイされていた関連するが明確に異なるカードゲームで、97枚の拡張デッキ(黄道十二星座、四大元素、美徳を表す追加の切り札を含む)を使用していました。「minchiate」という名前は、「些細なこと」や「無意味なこと」を意味するフィレンツェ方言に由来すると考えられています。
イタリアの地域的変種
イタリアの各都市は独自の名称とルールを発展させました:
| 都市/地域 | ゲーム名 | デッキの枚数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ミラノ | Tarocchi | 78枚 | 標準形 |
| ボローニャ | Tarocchino bolognese | 62枚 | 縮小デッキ |
| フィレンツェ | Minchiate | 97枚 | 拡張デッキ |
| フェラーラ | Trionfi / Tarocchi | 78枚 | 初期の生産の中心地 |
| ピエモンテ | Tarocchi piemontesi | 78枚 | 現在もプレイされている |
占いの文脈における名称
18世紀にタロットがカードゲームから占いの道具へと移行するにつれて、用語も変化しました:
- 「カルトマンシー(Cartomancy)」: カードを使った占いの一般的な実践(ラテン語のcarta = カード、ギリシャ語のmanteia = 占いに由来)
- 「リーディング(Reading)」: タロットの鑑定を指す現代用語
- 「スプレッド(Spread)」: リーディングで使用されるカードの配置パターン
- 「クエレント(Querent)」: 質問をする人
- 「リーダー(Reader)」: カードを解釈する人
議論と異なる視点
「トリオンフィ」は常に元の名前だったのか?
視点1:はい、「トリオンフィ」が「タロッキ」に先行した
記録上の証拠は、「carte da trionfi」が1442年の記録に現れているのに対し、「tarocchi」は15世紀後半になるまで現れないことを明確に示しています。
視点2:両用語は共存していた可能性がある
一部の学者は、「トリオンフィ」と「タロッキ」は異なる地域や社会的文脈で同時に使用され、「トリオンフィ」がより正式/宮廷的な用語であり、「タロッキ」が一般的/口語的な用語であった可能性を示唆しています。
アラビア語の語源は妥当か?
視点1:可能性はあるが未証明
アラビア語の理論(Turuq、Taraka)は、イスラム世界からヨーロッパへのトランプの伝播が記録されていることを考えると魅力的です。しかし、これらのアラビア語の単語とイタリア語の「tarocchi」を結びつける直接的な言語学的証拠はありません。
視点2:可能性は低い
ほとんどの語源学者はアラビア語の理論を推測的なものと見なしています。この単語はイタリアの方言から生じた可能性が高いですが、正確な派生は依然として不明です。
"Although there are several theories concerning the origin or the etymology of the word 'tarot' none of these proved to be completely satisfactory."
— FoAM / The Libarynth, "Tarot and Ethnobotany Tutorial"
出典: https://libarynth.org/parn/tarot_tutorial
ダメットの立場
マイケル・ダメット(1920–2011)、オックスフォードの哲学者でありタロット史の第一人者である学者は、次のことを主張しました:
- タロットは占いの道具ではなく、カードゲームとして発明された
- 「tarocchi」という名前には確立された語源がない
- 秘教的な解釈ははるかに後の時代(18世紀以降)に付加されたものである
- ゲームの仕組み(切り札が他のスートに勝つ)が決定的な特徴である
"The general effect of Dummett's work is to establish that the tarot pack was invented as a pack for playing a game."
— Edmund Leach, London Review of Books, "Tarot Triumph"
出典: https://www.lrb.co.uk/the-paper/v02/n17/edmund-leach/tarot-triumph
まとめ
| 時代 | 使用された名称 | 文脈 |
|---|---|---|
| c. 1420–1440年代 | Carte da trionfi | ゲームとカードの元のイタリア語名 |
| c. 1440年代–1500年代 | Trionfi → Tarocchi | 移行期; 両方の用語が使用される |
| 1500年代–1700年代 | Tarocchi(イタリア語), Tarot(フランス語) | カードゲームの標準的な用語 |
| 1780年代以降 | Tarot + Arcana | オカルティストによる秘教的用語の追加 |
| 現代 | Tarot(英語), Tarocchi(イタリア語) | ゲームと占いの両文脈 |
参照した情報源: Wikipedia (Trionfi cards, Tarot), FoAM / The Libarynth (libarynth.org), London Review of Books (lrb.co.uk), History Forum (historum.com), Carlo Penco / Dialnet (dialnet.unirioja.es), Victoria and Albert Museum (vam.ac.uk), Trionfi.com.